ぶろぐはぶろぐ。

今日という一日を忘れないためのセットリスト

日比谷野外音楽堂で泣いた
正式にいえば、日比谷野音の裏入り口で泣いた。


それは決して迷子になったからじゃなくて、虚しくなって泣いた。
東京に来て2年半。
私は映像の仕事がしたくて東京に来たのに、なんだか自分がとても惨めに思えて泣いた。
来月で27歳、高校を卒業して9年位、大学でさえ卒業して5年になる。
私は一体自分がどうなりたくて、何がしたいんだろうって27歳にもなってまだ考えている。



日比谷野音にずっと憧れていた。


フジファブリックのライブ映像がとってもかっこよくて、
私もこんなエモくてかっこいいものを撮りたいと思った。

高校時代は、報道の仕事がしたいと思っていた。
大学に入って、報道のカメラアシスタントのアルバイトを始めて、
よりその思いが強くなった。
色々な現場にいき、狭かった視野がグンと広がった気がした。

特に阪神淡路大震災の取材に行った時は、「自分の地元を忘れてほしくない」と思い、神戸新聞に就職したいと思った。
新聞社やテレビ局のインターンシップに行って、
「もしかして私の夢は叶わないんじゃないかな」と思った。
私よりももっと「世の中」のことを考えて、
自分の意見をしっかりもった人たちは世の中に腐るほどいた。


視野が広くなったなんて勘違いしていたけど、
私はとても狭い世界に生きていた。

大学3年生でフィリピンのミンダナオ島
ハウスオブジョイという施設に行った。
沢山の子供達が私を必要としてくれているような気がして、
とても嬉しかった。
でも、そこに長年ボランティアでいた日本人に
「ここにくる大学生は自己満足だから。
どうせ貴方達はもう来ないでしょ?」と言われた。
その時は、カッと頭に血がのぼって言い返しそうになったけど、
何もいえなかった。

私は27歳になる。
あの時から、フィリピンにはまだ一度も行けていない。


フィリピンで仲良くなった女の子に、
「涼花は何がしたいの?」と聞かれた。

まっすぐに私を見てくれるその子をみて、
私は何がしたいんだろうと思った。


「私は、人に何かを伝える仕事がしたい」


素敵な夢ね、涼花なら絶対に叶えられるよ。
と言って、頭をなでてくれた。





先日実家を整理していると、その子への手紙が出てきた。
できない英語で、「私は東京にいって頑張ることにしました。」と書いていて、
中学生が描いたレベルの下手な私とその子の似顔絵が書いてあった。
送れずにいた手紙は、捨ててしまった。
その子がハウスオブジョイを出てしまったことをネットで知ったから。
もう会えないのかな、と考えた時、
あの時に言われたセリフを思いだした。
「自己満足」



東京に来て二年半が立つ。
たった二年半なのに、良く泣いたなぁ。
一人で寂しくて泣いた。
1月17日に東京駅のスタバで人に怒られて泣いた。
帰り道にお母さんに電話したことなんて何回あるんだろう。
風邪をひきやすくなった。
風邪がこんなに辛くて、しんどいものだと思わなかった。
たくさんの映像の現場にいかせてもらった。
たくさん人にも怒られた。

むいてない
センスない
諦めついた?


言われるたびに落ち込んだし、
死にたくなった。
大学を選ぶ時に、母親に「芸大にいきたい」と言ったことがある。
「はぁ?あんたがほんまに映像やカメラが好きならもっと勉強してるわ、あほちゃうか」
と言われた。
今考えるとその通りだなと思った。


この1年、いろんな方が私にチャンスをくれた。
大きなパソコンだって買った。
ライブの映像も撮らせてもらったし、
メイキングやたくさんの映像を撮らせてもらえる現場にいけた。

制作会社の人が、ディレクターとして名前が載ったCDを送ってくれた。
とっても嬉しくてお母さんに報告したら、
こっそり母もそのCDを買ってくれていた。



でも突然わからなくなる。
私はずっと成長していけるのかな、
好きな映像を撮り続けて食べていけるのか。
おばあちゃんになってからも暮らしていけるのか
途方もない不安で押しつぶされそうになる。

私は、いまでも人に何かを伝えられる仕事がしたいと思って、
映像を撮る仕事をしている。
でも、それだけじゃ不安でバイトもやめずに続けている。
スケジュールの調整がうまくいかなくて、
人に迷惑をかけたこと。
ウソをついてバイトを休んだこと、たくさんある。




私は憧れの日比谷野音にきた。
それはディレクターとしてでなく、バイトで。



私はこの先、あのフジファブリックのライブ動画以上に
かっこいい動画が撮れるんだろうか。

ライブでキラキラしている女の子達をみて、
自分の人生がわからなくなってめまいがした。
虎ノ門まで歩いている時、
「もう政治なんてどうでもいいよ!」と叫んでいるサラリーマンがいた。
「福島を忘れるな」とかいた看板の前でたむろする若者を見た。
浴衣で幸せそうなカップルをみた。




もうすぐ27歳になる。
たまに自分がどうしたらいいのかわからなくなる時がある。
好きな音楽を聞いて、いろんなことを思い出す。
見返したい人たちがいる。


野音の裏口で泣いた今日を絶対に忘れない。




【今日という一日を忘れないためのセットリスト】
1.東京/くるり
2.さよならロストジェネレーション/アジカン
3.ももとせ/100s
4.明日もいつも通りに/aiko
5.夜には星と音楽を/ヘルマンH
6.茜色の夕日/フジファブリック